2017年3月に「おもいでばこ」PD-1000Sシリーズが発売されてから、早1年以上が経過しました。発売してからの1年、、さまざまな方との出逢い出会いやご要望、お言葉から「おもいでばこ」は進化成長をつづけています。今回、「おもいでばこ」の製品企画を担当する根本将幸に改めてこれまでの振り返りと、今後の想いを語ってもらいました。
「おもいでばこ」―製品企画担当インタビュー 前篇はこちら
絶え間なくアップデートするのが「おもいでばこ」の特徴
−2017年に現行モデルを発売してから、1年の間に具体的にどのようなアップデートをしたのでしょうか。
2017年3月以降の、代表的なアップデートは3つあります。
まず、ユーザーニーズとして、特に写真整理アドバイザーの皆様より強くご要望をいただいていたのがiCloudフォトライブラリからの写真取り込み機能です。こちらは、iPhoneでiCloudフォトライブラリをオンにしつつ、「ストレージを最適化」という設定をオンにしてしまうと、写真データはそのままあるように見えるのですが、iPhoneが端末の空き容量を確保(最適化)するため、写真のオリジナルデータはiPhoneの中から削除され、iCloud上にのみオリジナルデータが保存された状態になります。
2017年3月の時点では、その写真データの本体がiPhoneの中にないため「おもいでばこ」に転送することはできない、とご案内していたのですが、何とかiCloud上にある写真を簡単に「おもいでばこ」に取り込みできるようにできないかと言うご要望をいただいていたのです。iPhoneの中の写真整理を提案するときに、iPhoneの写真アプリからは、iPhoneにデータ本体があるのか、iCloudに上がってしまってiPhoneにはないのかがわからない状態になります。この部分が、iPhoneの写真のお困りごとをサポートするときに、一番難しい部分だから対応してほしいと。
このご要望にお応えするため、“iPhone内にデータがあっても、iCloudフォトライブラリ上にしかない状態であっても、区別なく「おもいでばこ」に取り込めること”を開発目標としました。機能としてはわかりやすいシンプルなものですが、実際に取り組んでみると参考となる情報も少なく、非常に難易度が高い開発となりました。リリースは着手からまる4か月後の、8月になりました。でも、そのリリース時に公開したブログ記事の“「iCloudストレージが残りわずか」は、写真を移動して解決”は、おもいでばこブログでも屈指の人気のコンテンツとなっています。この件は、同じように困っている方が、たくさんいらっしゃることを改めて認識しています。
2つ目は、ごみ箱機能の改良です。地味な改良なんですが、お客様の利用シーンを考えるとこれはやっておかなきゃいけないと。今までごみ箱に入れたものは「すべて空にする」しかできなかったのですが、ごみ箱に入れたものの中から選んで戻したり、選んだ写真のみを「おもいでばこ」から削除できるようにしたり、そもそもごみ箱内の写真の並びを削除した順に見られるように、という改善を行いました。実際に写真整理を行うときに発生する人のミスや、心変わり、またどうしても見られたくない写真を送ってしまったのでそれをすぐに削除したいといった要望への対応は、急がなければと考えました。
3つ目は当初予定になかったものです。上記のような取り組みを終えて、「さあ次だ」というときにiPhone側のアップデートで写真・動画が全く新しい形式に変わった事がきっかけでした。iPhone XやiPhone 8の写真形式HEIFと動画形式HEVCへの対応です。「おもいでばこ」の操作感や、イノベーティブな体験の進化はなかったかもしれないですが、3つとも「おもいでばこ」の重要なコンセプトである「ひとまとめにして楽しむ」を守るために、あるべきアップデートだったかなと思います。
―写真整理アドバイザーさんの声がアップデートに反映されたとのお話もありましたが、他の方々からもご要望をもらうことはあるのでしょうか?
『おもいでばこアンバサダー』のみなさまからのご意見やメッセージ、直接お会いした時にご意見も頂きます。しかしそれをどうやって実現していこうかと考えつつ、むやみに機能を増やしてもいけないとも思っています。何かをできるようにすることは、反面動作が遅くなったり、操作が難しくなったり、わかりにくくなったりといったことが起こりがちです。パソコンの写真管理アプリや機器では、そういう風に「進化」してしまったものも多いんじゃないかと。2018年3月に「おもいでばこ」にWindowsからアクセスできるアプリをリリースしました。こちらは、お客様からの長らくのご要望にも応えたリリースなのですが。サクサクと気持ちよく使える「おもいでばこ」らしい部分を守り、シンプルに写真を見返したり、パソコンで写真を取り出したりが、快適にわかりやすく実現することを目指しました。
−ユーザーからの要望や開発チーム内の提案の中から、どういった点を優先して取り組んでいるのでしょうか
いろいろなニーズはあるのですが、結果的に優先したのは、あらゆる写真を難しい知識を必要とせず取り込んで、安心して写真を残せるということにちなんだものになっています。直観的インスピレーションも重要だと考えていますが、常に意識しているのはこういう機能が欲しい、ああいう機能が欲しい、こういう風にしてほしい、というのを全部ひとつずつケアしていくのではなく、「ただ1つ、これを実装したらみんなの希望が実現するね。」というアプローチができないかと。自分がイメージしていたものとは違うけれども、こうできるならこれでいいじゃんとなる感じです。「お客様がおっしゃっているさまざまなニーズのその奥で、一体何に本当に困っているのだろう」ということに向き合おうと心がけています。
また大前提として守っていきたいことがあって、それは「おもいでばこが預かっている大切なデータを壊れないようにするためには、どうしたらいいだろうか」ということです。機械としては、壊れないとは言えないのですが、バックアップ機能や復旧機能の改善や、修理のフロー、またバッファロ-正規データ復旧サービスとの連携強化など、まだまだ行うべきことはたくさんあると思っています。
どんどん成長していく「おもいでばこ」パパとしてのおすすめの使い方は?
−ユーザーのお声をいただきながら、どんどん成長してきた「おもいでばこ」。今後もどんどん成長していくのかなと思います。機能的な部分のお話をたくさんいただきましたが、最後にお子さんがいらっしゃる根本さんがおすすめする『おもいでばこ』の使い方を教えて下さい。
子どもの9歳の誕生日にカメラをプレゼントました。子どもがそのカメラで撮った写真を「おもいでばこ」に入れて家族で見ています。ちょっと話がずれるかもしれませんが、デジタルカメラがどういうものか知っている人がスマホで写真を撮るのと、スマホしか知らない人の写真の撮り方、向き合い方ってちょっと違うんじゃないかと、私は思っているんです。
今日もこのインタビューの様子をデジタルカメラで撮って貰っているのですが、レンズが向いている被写体である私と、レンズを向けているカメラマンさん、両者ともスマホで写真をシャッと撮る気軽さとは、明らかに違う感覚があると思うんです。スマホ撮影が良くない、劣るというのではなくて違う性質があるなぁと。子ども達には、そういう元来のカメラと写真のあり方も理屈じゃなくて理解してもらいながら、写真を楽しんで欲しいなと。また、レンズを向けてシャッターを切るというカメラ撮影ならではの良さは、「おもいでばこ」とデジカメをセットで利用していただくことで、いろんな方に、改めて感じていただければと思います。
「明日は、写真展に出展する作品を撮りに家族で出掛けるんです。」と話す根本さん。
写真というのは見返した時に価値が生まれる
−ここ最近、アンバサダーの方にもお聞きして興味深かったのが、「おもいでばこ」に入っている、とっておきの1枚と、こういう写真を撮っておくといいよというアドバイスでした。日常の何気ない1枚がとっておきの1枚だったりするわけですが、根本さんが写真を撮るときに気をつけていることはありますか。
“見返す前提で撮る”ことですね。最近、普段ミラーレス一眼を使っているのですが、今は見返す際にテレビ画面いっぱいに表示出来るように設定で撮影の画角を16:9に設定しています。「おもいでばこ」で写真を見返すのが繰り返されていくと「アップばかりではつまらない」「情景がわかるよう風景や行った店の看板も撮ろう」と言うような気づきが出てくるかと思います。写真というのは見返した時に価値が生まれるものだと思うので、それを前提に撮っていくと、被写体がカメラで撮られていることを意識したショットも、何気ない日常を切り取ったショットも両方大事だと思います。
この1年を改めて振り返って。
スマホのカメラロールのコピーが自動で手軽に残せるようなサービスがあっても、それは気軽に人には見せられないものだったというのは「おもいでばこ」にとっては大きな発見でした。要らないスクリーンショットとか、これはちょっと家族に見せない方がいいかなというような。週刊誌等のパパラッチではないですが、写真って怖い側面もあって、一撃で家族が気まずくなったりする、という話もあると思うんです。うちはないですけどね!(笑)
「おもいでばこ」に写真を選んで送るというのは、整理しなきゃという後ろ向きな思いで使うものではなく、これはみんなで見ると楽しいものだな、シェアしたいなという気持ちで送信することを日常的に繰り返しているだけで整理になる、そこが写真を残すというツールとしてとても前向きだなと。ごみ箱の機能を改良アップデートしたのも、1枚絶対見られたらいけないものをゴミ箱に入れたら見つけられなくなって他の何千枚もの写真も一緒に完全削除しなきゃいけないという話を実際にいただいて。それだけポンと捨てられるような安心感、それは「おもいでばこ」にとって必須だと思ったからなんです。
新モデル発売から1年経っても進化をしつづける「おもいでばこ」。その成長の裏側には、新たな出会いやユーザーの皆様の声がありました。次はどんな成長をお見せできるか、今から楽しみです。「おもいでばこ」ユーザーの皆様も使ってみての気付きがあれば、ぜひシェアしてくださいね。
▼デジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」