【前編】新「おもいでばこ」の楽曲に秘めた想いー作曲家LAVA氏インタビュー

「おもいでばこ」で写真鑑賞をする時に、いつも流れてくるあの楽曲…。時にはワクワク心躍るように、時には落ち着いた雰囲気で。多彩なアレンジで聴かせてくれるこれらの楽曲を一手に担っているのは、作曲家であり、DJ/サウンドプロデューサーとしても活躍するLAVAさんです。

LAVAさんは90年代にはロンドンを拠点に、DJとして活躍。その後、2000年代からは国内に拠点を移し、DJや音楽イベントのプロデュースなどを中心に活動していますが、その一方で、ライフワークとしている作曲活動にも精力的に取り組み、5枚のオリジナルアルバムのリリースや、シンガー・店舗等への楽曲提供なども行っています。

そんなLAVAさんに、新しく発売される「おもいでばこ」のために、新たに4つの楽曲を新規制作、おもいでばこ収録曲を含めたLAVAさんソングのおもいでばこ向け新規アレンジ8曲の全12曲をご提供いただきました。
そこで今回は、「おもいでばこ」プロジェクト全体統括の株式会社バッファロー コンシューママーケティング部の根本将幸さんとともに、LAVAさんがこの新規制作の4曲の楽曲に込めた想いと、そして「おもいでばこ」への期待について、LAVAさんの自宅スタジオにお邪魔してインタビューを行いました。

前後編でお届けします。

 

コロナで仕事の依頼が激減。そんな時に舞い込んだ、「おもいでばこ」の作曲依頼

―― LAVAさんは旧モデルに引き続き、新しい「おもいでばこ」でもBGMの作曲を担当されたわけですが、今回、どのような経緯で制作がスタートしたのでしょうか。

LAVAさん) きっかけは、根本さんからの1本の電話です。僕ら音楽家は、このコロナ禍でとても苦しんでいた時期が長かったんですね。僕の仕事が作曲や編曲、イベントや店舗のプロデュース、そしてライブへの出演といったところなんですけれど、それがほとんど全てなくなったんです。もう大ピンチでした。でも時間だけはすごくあるので気持ちを切り替えて「なにもすることがないならギターを練習しよう!」って思ったんです。

実は僕、ギターが本当に下手なんですよ(笑)。作曲のツールとしては使っているんですが、ちゃんと演奏できるようになってひとりでコンサートでも出来ればいいなと思って。そしていよいよ本気で練習しようか、って時に根本さんから電話をもらいました。ギターを持ち出してメロディを作り出していたちょうどその時、まるでそれを察知したかのように、彼がいきなり電話してきて(笑)。

でも正直言って根本さんからの電話はとても嬉しかったですね。制作もない、現場もない、そんなわけで収入もない。最悪の時に自分にとってはいちばんうれしい作曲の依頼があったのですから。

「写真を見て元気になれる、応援されている気持ちになれる曲」をテーマに

―― その1本の電話から、新しい「おもいでばこ」の楽曲制作が始まったわけですね。

根本さん) もともとの「おもいでばこ」の曲もすごくいい曲ばっかりだったんですよ。2011年と2012年に作っていただいた曲が16曲あって、もう10年くらい使用しています。

曲自体に悪い点なんて一つもないのですが、この10年くらいで世の中の空気感がちょっとずつ変わってきている気がして、今は「なんとなく不安」みたいな空気に、さらにコロナ禍も加わって…。
なので今回の依頼については、「写真を見て元気になる」とか、「自分が応援されているような気持ちになる」というテーマで作曲を依頼しました。

LAVAさん) 「元気づける」ために何ができるかと言うと、たとえば野球選手だったらホームランを打ってみんなを元気にしたり。でも、僕の仕事は「作曲」なんですね。じゃあ作曲でどうやって人を元気にさせられるのかと考えた時に、もちろん活発な曲を書いてノリノリで聴いてもらって元気になれる、というのもあると思うのですが今は時代が変化したこともありますし、それと同時に今回のクリエイティブでは違うフォーカスから僕なりのエールを音楽にしてみようと考えたんです。
だから今回は皆さんがおうちに帰って、少し日常を忘れられるような曲、そこからじんわりと元気をもらえるような曲、そんなイメージを描きながら作ってみました。

―― 「頑張れ!」じゃなくて、「頑張ってるね」って感じですね。

LAVAさん) そう。今っていろいろ日常がキツいですよね。そうするとみんなで外に出てイエーイ!という感じではなく、それよりもおうちに帰って、リラックスして聞いてもらえるような、少しその間だけ何かに“没頭”できるような曲のほうが、時代にマッチしているのかなと思いました。何に没頭するかはもちろん人それぞれで、たとえば「写真を眺めながら昔の恋人を思い出す」でも、「未来のビジョンを描く」でもいいんですけれど。そしてそれが「元気」や「パワー」につながっていくんじゃないかと思うんです。

根本さん) そうなんですよね。だから今回の曲を聴いていると写真を見返した時に、「あ、自分の人生まんざらでもなかったな」と思えてくるんですね。じわじわと響くような曲、というか。

初代の「おもいでばこ」は子育て中のママさんがターゲットだったので、BGMも明るい曲が多かったし、2代目ではそれよりちょっと大人っぽくして、ジャズみたいな曲を多めにしていたんです。そして今回の3代目では自分を肯定して、じわじわと元気づけられるような曲を新たに作っていただいたので、そのあたりの違いも楽しんでいただければうれしいですね。

過去の写真を見返すことは、未来に進むためのエネルギーになる

―― 最近はコロナで外出や交流も減り、「気持ちが沈みがち」という方も多いと思います。過去の写真を見返すことで、「またこんな楽しい時間が過ごせたらいいな」と思ってもらえたら素敵ですね。

LAVAさん) そうですね。このコロナの期間、みんなおそらく過去の写真をたくさん見たと思います。僕もそうでした。写真を見て過去を思い返したとしても、同じにはならない。でもその行為がまた次の時代に向かって進んでいくパワーになっていくのかなって思います。

いまはキツい時代ですけれど、大事なのは未来なんです。だから、過去を踏まえたうえで「未来に進むためのエネルギー」を音楽で生み出すことが、われわれ音楽家の使命だと思っています。

音楽を聴くとそのシーンが浮かんでくる、映画音楽のような楽曲を目指した

根本さん) LAVAさんが作る普段のアルバムの曲と、「おもいでばこ」の曲って違いますよね。アルバムの曲はどちらかと言うと「歌もの」でアップテンポですけれど、「おもいでばこ」の曲はインストゥルメンタルでしっとりしていて。これって、LAVAさんにとっても新境地だったんじゃないですか?

LAVAさん) 僕、実は映画音楽をやりたいんです。でもやっぱり、「僕の音楽」を求めている人に対して、まったく違うものをいきなり提示する勇気はなくって。ファンが求める「定番」をいつまでも制作していくってことは、音楽を作る人間にとっては「当たり前」なんです。もちろん、過去に作ったものをどんどん進化させて、さらにそれを超えていくような発想でやっていくわけですけれど。

僕は20代の時に歌手としてデビューしてこの業界に入り、その後イギリスに渡って作曲家になって歌ものの曲やダンスミュージックを主に作ってきたんですけれど、心の中ではいつもインストゥルメンタルの曲をやりたいっていう想いがありました
「ニュー・シネマ・パラダイス」など、有名な映画音楽を聴くと、「僕ら作曲家の究極の仕事って、こういう映画全部を支配してしまうくらいの音楽を作ることなんじゃないかな」って気がして。僕はそういう映像と音楽の絡み方にすごく憧れがあります。なので今回は「映画音楽を依頼されたつもり」で作りました。

過去の僕の作品にはあまりないニュアンスの曲たちで、コロナを通過したことで得た僕の中の新しい感情かもしれないですね。だから今回はバッファローさんがすごくいい機会を与えてくれたなって、感謝をしています。これからまだまだ新しいものを作っていきたいと思っている中で、とてもいい再スタートができたなと。

根本さん) そう言っていただけるとうれしいですね。


世の中の出来事や考え方、風潮などが変化していくとともに、「おもいでばこ」の中に入る写真や動画も時代によって少しずつ変化していくものだと思います。
今回は、コロナ禍でどこか不安な要素が付きまとう時代だからこそ、「おもいでばこ」なりに人々を応援できるようにと、「過去の自分が写った写真を見て元気になれる」ということをテーマとして作曲いただきました。
そこにLAVAさんが依頼前から感じていたことや考えていたことが相まって、今回の新曲が出来上がっています。

後編では、作曲いただいた新曲それぞれについて詳しくお話をお伺いしました。
今回制作いただいた曲のダイジェストをこちらでお聴きいただけます。>https://youtu.be/-xzTqsqCthI
後編はこちら

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