2020年12月4日、東京・大手町で一般社団法人写真整理協会が主催する家族写真についてトークするイベント「バッファロープレゼンツ 家族写真トークイベント『浅田さんと語ろう』」が開催されました。今回はその模様をレポートします。
家族写真の第一人者・浅田政志さんが語る家族写真
イベントにご登壇いただいた「浅田さん」は、2020年10月より公開中の映画「浅田家!」のモデルとなった写真家・浅田政志(あさだ・まさし)さんです。代表的な作品は「浅田家」をはじめとした、ご自身の家族を被写体にした演出写真の数々で、まさに今回のテーマ「家族写真」の第一人者です。まずは、「浅田政志さんトークショー」と題し、浅田さんが家族写真を撮るようになったきっかけや、家族写真の撮影の裏話、ご家族が増え父親になった今の家族写真の撮影について、ご自身の家族写真とともにお話いただきました。見る人を笑顔にする浅田家の家族写真の知られざる撮影秘話や苦労話もお話いただき、裏で静かに控えていた出演者の皆さんも、思わず笑顔になっていました。
東日本大震災の被災地で目の当たりにした「アルバムのチカラ」
後半は、浅田さんと編集者・藤本智士さんの共著である「アルバムのチカラ」を制作するきっかけになった東日本大震災の被災地で自発的に発生した写真洗浄に関するお話も。「たった1枚の写真から、持ち主の方が得られる感動、たくさんの力。そういったものを感じることができました。」と当時を振り返る浅田さん。「いつ、何が起きるかわからないからこそ、本当に大事な写真はデータだけではなく、紙焼きにして残しておきたい」と、写真を印刷して手元に残しておく重要性についてお話いただき、約1時間のトークショーを締めくくりました。
「家族写真のシャッターを押すときの気持ちは?」浅田さんにお答えいただきました。
さらに、当日参加された方から事前に募った質問にもお答えいただきました。
質問:「家族写真のシャッターを押すときの気持ちを一言で」
浅田さんのお答え:「写真って撮ってゴールじゃないんですよね。撮った後に見返して、いろいろ思ったり、感じたりすることが大切なところかなと思っていて。10年後、30年後に見返して、この写真がいつかいろんなことを語りかけてくれるような写真になればいいな、と思いながら撮っています」
質問:「家族写真を撮るときのコツは?」
浅田さんのお答え:「想像以上に家族全員で写真を撮る機会ってないんですよね。1年に1回くらい全員で撮るということを“習慣”にしていくといいと思います。そんなに多くなくても1年に1回、年賀状のためなど、結婚記念日など家族のタイミングに撮ることをおすすめしています。」
質問:「子供の笑顔を撮りたいのになかなか笑ってくれない子がいます。そんな子供を笑顔にする秘訣は?」
浅田さんのお答え:「子供を撮るとき結構苦労するんです。無理に笑う必要もないと思いますけど、笑わせると難しいんです。自発的に笑ってもらえるように好きなポーズを決めてもらったりと、意見を聞いて参加してもらうのがいいと思います。」
浅田さんにバッファローのデジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」をご紹介!
トークの後には、「おもいでばこ」の製品企画を担当する根本さんより、「おもいでばこ」について浅田さんにご紹介しました。昨今様々なデバイスで写真を撮れるようになり、それぞれのデバイスに写真がしまったままになっていることを問題提起。家族のそれぞれのデバイスで撮影した写真を「おもいでばこ」に移し、テレビにつなぐとリビングで家族で写真を振り返ることができることをお伝えしました。浅田さんからも「大きな画面で振り返れるのは皆で見られるからいいですよね。バックアップがとれるというのもいいですね。」とコメントをいただきました。
浅田さんと根本さんのトーク部分は、12月31日までバッファロー公式Youtubeで公開中です。
動画はこちらから:https://youtu.be/JNkhPT8_96g
▼デジタルフォト・アルバム「おもいでばこ」の詳細はこちらから
写真にまつわるプロたちが「家族写真」や「アルバム」についてトークセッション
イベントの後半は、「家族写真トークセッション」と題し、一般社団法人写真整理協会代表理事・浅川純子さん、一般社団法人生前整理普及協会代表理事・大津たまみさん、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社でアルバムカフェの運営にも携わる須長千江美さんを迎え、浅田さんと4名で「家族写真」をテーマにトークを展開しました。
「私たちにとってアルバムとは?」
まず、家族写真を語るに欠かせない「アルバム」に関する「私たちにとってアルバムとは?」がテーマに。アルバムカフェの活動も行われている須長さんの「日々『アルバムとは何か』って自問自答していますけれども、答えは正直、見つかっていないんです。」問いかけをきっかけに、トークを展開。さらに「ほとんどのお母さんがアルバムを作りたいと思っているんです。でも、言葉の端々に『作らなきゃいけない』とか『自分に課したノルマ』とか、義務感みたいなものが感じられて。『DNAに刻まれている』って、今は自分を納得させていますけれど、これはなんだろうって。」と続きます。
この問いに対し、浅田さんから「僕らの世代は、母や父が作ってくれたアルバムを持っている人がほとんどですが、ちょうど途中でデジタルに変わっていった『はざまの世代』なんです。僕ら世代がアルバムを作らなければ子ども世代はアルバムがない世代になってしまう。次の世代にアルバムの文化をバトンタッチしていけるかどうか、しっかり考えていかなければならない」と紙焼き写真でアルバムを残すことの重要性についてコメントされていました。また、お母さんたちがアルバムづくりを義務と感じているということに対し、浅川さんからは「写真の整理って、『だれかが負わなきゃいけない』ものじゃなくて、『やってみたら楽しい』ものだと思うので、楽しみを感じながら、貴重な時間にしてもらいたいですね。」と、楽しみながら継続的に写真を整理して、常に写真を見られる状態にしておくことの重要性をお話されました。
生前整理の観点から、専門家の大津さんは「アルバムって、人生そのものなんです。頭の中の、記憶にはないけれども記録として残っているもの、それで過去を振り返ることができるもの。だからアルバムが残っていれば、お孫さん世代が、おじいちゃんおばあちゃんを知るきっかけにもなるんですね。『いのちのつながり』というものを感じることができる、最高のツールだなって思うんです」とコメント。これにも一同、「そうですよね」と首を縦に振っていました。
見返すためにはまず写真整理が必要
さらに須長さんからは、「ママたちはアルバムを作りたいと言っているんです。作れない理由を聞くと、『写真整理ができないからアルバムが作れない』という声が圧倒的に多いんです。」という話題が。その話題に対し、浅田さんから「写真の整理には、まずはスマホの中でのフォルダ分けですかね?」という問いに、須長さんは「違います!」と即答。
その答えは「妻も夫もそれぞれのスマホで写真を撮る。ここにデジカメもある。これらの写真をどこに集約するかでママたちはつまずいています」と問題提起。最近パソコンが家にない人が多い中で一役買うのが「おもいでばこ」であると、写真整理の必須アイテムとしてご紹介いただきました。さらに浅川さんからは、「私はもうひとつ、『写真を見ていない』というのが、整理をはばむ大きな原因。ひとりでスマホで見るんじゃなくて、家族で見て、ワイワイと時間を過ごすというのが、本来の写真の楽しみ方だと思うし、そういう時間が生まれれば、『ちょっと写真の整理でもしてみようか』っていう気持ちが自然に生まれると思うんです」とお話されていました。
家族写真でのコミュニケーション
最後に話題は「家族写真」に移り、浅田さんが実践してきた、毎年恒例になっている家族写真撮影会の、知られざるメリットを教えてくださいました。「僕らの場合は“いつもの家族”じゃない、何かになりきって撮影しているので、撮影自体が“いい時間”なんです。それなりに時間もかけて、準備もして、それが1枚の写真に集約されて、一緒に何かをやった成果が残るわけです。一緒に恥かいて、汗かいて、できたっていう成果が写真なんです。1枚1枚の写真に一緒に過ごした時間があって、それを見返すことができる。それが、家族の関係性を活性化してくれていると思います。」とお話をいただきました。
昔と比較して家族で一緒のことをする時間が減ってきているいま、家族写真を撮ることは、「イベント」でもあり、そういった文化をここにいるメンバーで定着させていきたいですねと皆さんにこやかにお話されていました。その他にも「写真葬」のお話や、「遺影写真」など、人生の終わりのときに必要になる写真のお話も。「子どもの写真は突き動かされて撮るが、自分や親の写真が撮っておけばよかった写真として挙げられる」という調査結果も交えながら、元気なうちから遺影写真にも使える写真を毎年撮っておくことの重要性についての議論も。家族写真やアルバムを起点に、写真を見返すこと、残すことにまつわる様々な話題が繰り広げられました。最後に浅川さんより「『写真になっている時点で、その人生の大事なシーンを残す』ことを選択したわけですから、聞いてくれた方がそれをどう活かしていくか考えるきっかけになったらうれしい」と挨拶があり、楽しく穏やかな雰囲気のなか、会を締めくくりました。
最後に:「写真は撮るためだけではなく、見るためにある」
日々簡単に撮影できるようになった写真。写真は撮ることだけが目的なのでなく、見て振り返ることが重要であることがこのイベントにご登壇いただいたプロの皆さんが共通しておっしゃっていることでした。紙に印刷することで手元に置いておく重要性もそうですし、家族のために整理して残すこと、リビングの大きな画面で見返すことで、コミュニケーションのきっかけにもなる。そんな大事なことを改めて認識して、家族や写真とのかかわり方を考えるきっかけになる2時間でした。ご視聴いただきました皆さん、そしてご登壇いただきました浅田さんはじめ写真のプロの皆さん、どうもありがとうございました。
今回イベントを主催いただいた写真整理協会さんの特設ページでお申し込みいただくと、12月31日までイベントの模様が見逃し配信でご覧いただけます。ここには書ききれなかった様々なお話も聞くことができます。浅田さんの著作とあわせて、ぜひご覧ください。
イベントの詳細はこちら:https://www.photokeep.jp/2020-asada
写真整理協会さんの活動についてはこちら:https://i.photokeep.org/