2024年1月、「おもいでばこ」は2022年7月に新モデル(PD-2000)を投入して以来、初めての追加機能を搭載したソフトウェアアップデートを実施しました。
アップデートの内容は大きく3点。「おもいでばこ」のアルバムをグルーピングできる「アルバムグループ」機能の搭載。特定のアルバムに入れた写真や動画をカレンダーやおもいで散策で表示しないようにできる「非表示アルバム」、そして取り込んだ写真を簡単に振り分けられる「振り分けモード」の搭載です。
今回は、新機能アップデートリリースの特別企画として「おもいでばこ」プロジェクトを統括する、株式会社バッファロー コンシューママーケティング部の根本将幸さんに、インタビューを実施。
「追加機能は、一見地味な機能に感じるかもしれませんが、どれも「おもいでばこ」には必要不可欠で、本来は、もっと早くから搭載されていなければなかった機能なんです」と、根本さんは語ります。
長年に渡って「おもいでばこ」に携わる根本さんから、アップデートへ込めた思いや、今だからこその「おもいでばこ」の重要性について語ってもらいました。
”おもいでを楽しむ暮らしを身近に”する存在として認知が広がった2023年
―― 前回のインタビューは、2022年6月のPD-2000シリーズ発売の時でした。あれから「おもいでばこ」をめぐる状況の変化をお伺いします。
おかげさまで、PD-2000シリーズは、たくさんのおうちにお迎えいただいています。2023年の春頃、緊急事態宣言が解除された時期に、少し販売台数が伸び悩んだこともあったのですが、その後回復しました。様々な制限がなくなったことで外出ができるようになり、そこで撮影した写真を楽しみたいという方が多かったのではと考えています。
PD-2000シリーズの発売は2022年7月だったのですが、2023年に、家電批評 ベストバイ・オブ・ザ・イヤー2023を受賞したりと、改めて新モデルの認知が広がった年だったと思います。ベストバイ・オブ・ザ・イヤーの受賞部門がすごくて「デジタルフォトアルバム部門」。その部門、「おもいでばこ」しか対象製品が無いはずなんですが(笑)、部門を新設いただき、その上で受賞させていただいたのは、とても嬉しく思っています。
―― ベビーテックアワードも受賞されましたね。
ベビーテックアワードというのは、子育てをテクノロジーでサポートする商品やサービスについて表彰し広めるというアワードです。「子育てをテクノロジーでサポートする」という視点でも認めていただいたことは大変感謝しています。
ベビーテックアワードのプラチナスポンサーを冠した「アカチャンホンポ賞」を受賞したのですが、こちらは全国の1400名のアカチャンホンポ様のスタッフ様からの投票で選定いただきました。赤ちゃん本舗の担当者様からは、「おもいでばこ」は圧倒的な得票数でした、とのお言葉もいただきました。赤ちゃん本舗様の選考コメントに「おもいでを楽しむ暮らしを身近にしてくれます」との一文がありました。「おもいでばこ」のコンセプトを理解いただき、ご評価いただいたことを感じて、嬉しさ倍増でした。
―― 「おもいでを楽しむ暮らしを身近に」っていいですね。
はい。逆に考えると、それだけ「おもいでを楽しむ暮らしが、実は身近でなくなってきている」ということでもあるのかなと。今回のアップデートのテーマにもつながる話かもしれません。
みなさまの声で進化する「おもいでばこ」
ハードウェア性能を改善したPD-2000シリーズ
―― 今回のアップデート機能の搭載には、どのような背景があったのでしょうか?
きっかけとしては、PD-2000シリーズ発売前の2020年までさかのぼります。当時は、新モデルの企画前で、今後おもいでばこをどうするか、という検討を行っていた段階です。 Facebookでのおもいでばこアンバサダーズというグループがあるのですが、そこでメンバーの皆様に「なんでもおもいでばこに対するご要望や改善点を書き込んでください」と募ったところ、たくさんのコメントをいただきました。
いただいたコメントを一つ一つを吟味し、整理すると、大きく二つに分類できました。
一つは、当時のハードウェア性能に起因する課題です。4K解像度の動画やスマホで採用が進んできたHEVC動画を直接取り込んだり再生できないや、容量2TBでは足りない場合に選べない、取り込みが遅いといった課題です。
もう一つは、おもいでばこのソフトウェアに起因する課題です。おもいでばこに写真や動画を取り込むのは簡単にできるけど、そのあとに、写真を整理したり絞り込んだりする機能が貧弱だったり使いづらいという課題です。
―― そのハードウェア性能の課題を解決したのが、PD-2000シリーズですね。
はい、その通りです。PD-2000シリーズは、これまで培ってきた”おもいでばこシステム”を、まず、まるっとそのまま新しいハードウェアに載せるところまでをやりましょう、というコンセプトのプロジェクトでした。
まるっとそのままと言っても、これまでと全く違うハードウェアにおもいでばこシステムを移植して完璧に動作するところまで行う訳ですから、大変手こずりました(笑)
使い勝手を向上したソフトウェアアップデート
―― 今回のアップデートは、ソフトウェアに起因する課題への取り組みなんですね。
はい。今回のアップデートでは、おもいでばこのソフトウェアを大幅に改良し、写真や動画の管理方法や、スマートフォンやパソコンのおもいでばこアプリとおもいでばこ本体の間の通信の動作について抜本的に作り変えを行っています。ソフトウェア開発についての手間や工数については、PD-2000シリーズを最初に発売した時よりもかかっていると思います。
―― 大変な作業だったんですね。
なかなか手を出せなかった理由でもあるのですが、このような部分に手をいれると、本体ソフトウェアの対応だけでは済まないんです。本体に加えて、iPhoneやAndroid用、さらにWindows用やmac用のおもいでばこアプリも新しい動作に合わせて作り変える必要がありました。
振り返りたい写真へアクセスしやすくする「アルバムグループ」機能
―― アップデートで追加された新機能のポイントについてお伺いします。
まず、大きな前提を。今回搭載した3つの新機能は、それぞれが独立の機能では無く、すべてセットでつながっているんです。加えて、「おもいでばこ」への搭載だからこそ意味がある機能となっています。この点を頭の片隅に置いておいてください。
最初に、アルバムをグルーピングできる「アルバムグループ」をご紹介します。
名前まんまの機能です。パソコンでいう「フォルダ」をつくって、そこにアルバムを分類できるという機能です。「おもいでばこ」のアルバムは、いくつでも作成できるようになっているのですが、アルバム自体を整理する機能がありませんでした。「写真だけではなく、アルバムも整理したい」というご要望は長年いただいてきましたので、それにお応えできるようになります。
また、ひとことに「アルバム」といっても、実はその時どきで、ばらばらの「方針」で作ってしまうんですね。例えば定番の「運動会」や「クリスマス」という”イベント”軸のアルバムだったり、「パパ撮影」「xxくんのカメラ」等の撮影者の軸だったり、「風景」や「ランチ」等の被写体がテーマだったり。人によっては「フォトブック作成用」とか、「削除候補」という整理用としてのアルバムを作っている方もいらっしゃると思います。
アルバムをどうグルーピングするかは、ご利用になる皆様それぞれで良いと思いますが、迷った場合は、アルバムを作成した時の「方針」で共通点がないか、とかを考えていただくことで、アルバムグループをうまく活用いただけると思います。
取り込んだ写真や動画がより愛しくなる「非表示アルバム」
―― 次は、「非表示アルバム」についてお伺いします。どこで「非表示」になるんですか?
アルバムに関するもう一つの機能が「非表示アルバム」です。どこで非表示になるかと言いますと、このアルバムに入れた写真は、アルバムからは見られても、カレンダーやおもいで散策では表示されなくなるんです。ちょっと特殊な立ち位置のアルバムです。
―― カレンダーで表示されなくなる「アルバム」は、どういう時に使うのでしょう?
できることの説明だけでは分かりにくいかもしれませんね。おそらく「おもいでばこ」を利用中のユーザー様でも、「待ってました」という方と「そんな機能必要?」という方がいらっしゃるのではないかとは考えています。ただ、この「非表示アルバム」は、ご利用いただくことで「おもいでばこ」に取り込んだ写真や動画がより愛しくなる機能と考えています。
―― 愛しくなる機能ですか。ぜひ 詳しく教えてください。
おもいでばこの写真を観るメニューは、「アルバム」「カレンダー」「最近とりこんだもの」「おもいで散策」の4つがあります。私としては、どれも入口が異なるだけの「アルバム」だと思っているんです。
自分で選んだり、お気に入りをつけた写真等の”セレクトした写真”は「アルバム」メニューから閲覧する。その一方で、特定の日付や月をアルバムとして楽しむのは「カレンダー」メニューから閲覧するというイメージです。
これまでの「おもいでばこ」のルールだと、ある日の写真をカレンダーから選んでスライドショーをした場合に、スマホのスクリーンショットとか、家族に関係無い仕事の写真とかをとりこんでしまうと、同じ日付だとそれらも必ず一緒に表示されてしまいました。
そのために、これまでの「おもいでばこ」へのデータの取り込みは、それらのデータを取り込まないように選んで、おもいでばこに送信して楽しむという使い方が一般的だったのではと思います。もしくは、それらのデータが入ってしまっていても、見て見ぬふりをするとかですね。そういった場合、カレンダーでその日を眺めると、どうしても不要なものが入っているように見える場合がありました。
―― 逆に言うと、スクリーンショットとか仕事の写真とかは保存しにくかったと。
はい。そういったデータを保存したいというご要望に対しては、家族用とプライベート用の2台のおもいでばこに分けてご利用いただく手がありますよ、というようにお伝えすることもあったのですが、お金もかかりますし、やはり苦しい(笑)。
その課題に対応するための機能として、「カレンダー」やランダムに写真が表示される「おもいで散策」では表示されない「非表示アルバム」機能を搭載したわけです。そういった「カレンダーで表示されるのは困るけど、スマホからは移動して消したい」ような画像や動画を、おもいでばこのストレージを間借りして入れることもできますよ、というアイディアなんです。
スマホからまとめて取り込んだ後に、このあとご紹介する「振り分けモード」で振り分け操作をしたり、そもそも、スマホで送るときに、非表示アルバムに設定しているアルバムを指定して送信すると、カレンダーに表示されない写真として取り扱います。
―― なるほど。「おもいでばこ」の使い方が、より広がりそうですね。
非表示アルバムにいれた写真や動画は、あくまでもカレンダーに表示されないだけで、アルバム画面からは当然閲覧することができますので、誰にも観られたくないとか、観られては困るというものを入れるのには向いていないと思いますが、「パパ仕事」「消せないスクショ」とかそういうアルバムを非表示アルバムとして設定すると便利だと思います。
「パパのプライベート」というアルバムグループの中に「パパ仕事」「パパ趣味」「パパスクショ」と3つの非表示アルバムを作ってスマホから送ってスマホの容量を空けるという使い方もできます。
―― アルバムグループがここでつながりました(笑)。
写真の『思い出力(おもいでりょく)』を上げる「振り分けモード」
アルバム作りをカンタンに
―― 残るは「振り分けモード」ですね。なぜこの機能が搭載されたのですか?
「おもいでばこ」のアルバム機能は、ある特定の日の写真や動画を全部「キャンプ」アルバムに入れるというような操作を行う場合には問題がないのですが、これまでお話してきたような、この写真はこっちのアルバムへ、次の写真はあっちのアルバムへ、といったいわゆる「振り分け」ていくような操作を行う場合に操作が煩雑になってしまうという課題がありました。
長年「おもいでばこ」を応援いただいている、写真整理協会の皆様からも、おもいでばこに入れたあとのアルバム機能を利用する写真整理は大変だから、入れる前に整理しましょうというようなご提案をしていたとお伺いしてショックをうけました。「おもいでばこ」は写真データの日時をベースにカレンダーへの自動整理はできるけど、実際に自分で写真を選んで整理することが、整理のプロの皆様に大変だと思われているのはまずいぞ、と。
また、今回ご紹介の機能はどれも「アルバム」が基本となります。そこで、肝心の「アルバムに写真をいれる」操作が煩雑なままでは、全体として使いにくくなってしまいます。そこで、イメージとしては”写真の束を手にもって、一枚一枚眺めつつ、複数の箱にぽんぽんと仕分けていく”ような「振り分ける作業」をコンセプトに新しく設計しました。
自動整理された写真を家族みんなで楽しみながら振り分ける
―― 写真の束を複数の箱に仕分けていくですか。ちょっと楽しそうです。
はい。楽しいです(笑)。おもいでばこの前提として、取り込んだ写真や動画は自動的に「カレンダー」に整理されます。とりこんだ単位で表示したり、前回のとりこみや前々回の取とりこみという風にさかのぼることもできる「最近とりこんだもの」という機能があります。これらの機能で表示される写真や動画の”カタマリ”をベースに振り分けを行っていけます。
―― カレンダーのある日の写真が50枚だったら、その50枚を振り分けるという感じですね。
はい。全く整理されてない写真の束を振り分けるというのは途方にくれますが、例えば「運動会の日」の写真をテレビに表示して、お兄ちゃんと妹ちゃんの二人のベストショットをそれぞれのアルバムに家族でわいわい楽しんでいただけたらいいなぁと思っています。
振り分けの操作についても、おもいでばことテレビとリモコン操作だけでできますので、使い方を教えてあげたら、小学校入学前のお子さんとかでも、写真を振り分ける操作が行えると思います。振り分けの操作については、最初に振り分けモードに入ったときや振り分けモード内のメニューに専用の操作ガイドも用意しました。
―― 振り分け先として選べるのはアルバムだけなのでしょうか?
振り分け先として選べるのは、アルバムを最大9個まで(リモコンの1-9までの数字ボタン)と、加えてお気に入り(★ボタン)、ゴミ箱(+ボタン)に振り分けられます。アルバムはそれぞれの数字にお好みのアルバムを簡単に割り当てられるようになっています。もちろん、カレンダーに表示されない非表示アルバムに設定したアルバムへの振り分けも行えます。
例えば、「いまいち」とかいうアルバムを作って、それを非表示アルバムに設定することで、写真を振り分けるときに、不要な写真はゴミ箱、残しては置きたいけどカレンダーの一覧からは外して置きたい写真は「いまいち」アルバムへ、というようにすることでができますね。案外「表示するのはいまいちだけど、捨てたくはない」という写真の居場所がこの機能を利用することで生まれると思っています。
振り分けモードの中でも、写真の拡大や動画再生、写真の回転も行えます。ファイル名、解像度やファイルサイズも表示できますので、見た目が同じ写真でオリジナルと縮小版がとりこまれていたら、縮小版のほうをゴミ箱に振り分けていくこともできます。
思いを持って振り分けるからこそ生まれる『思い出力(おもいでりょく)』
―― 「おもいでばこ」らしいこだわりですね。
はい。ここまで熱くお話してきましたが、実際のところ、スマホの中にたくさん入っている写真や動画を、がっつりと振り分けていったり写真の整理を行っているよ、という方はそんなに多くはないのではと思っています。
でも、家じゅうの写真や動画を「おもいでばこ」に集めて、それを暮らしの中で見返して楽しんでいくという習慣の中に、ちょっとした写真の整理・メンテナンスを、お手軽サクサクに行える機能はどうしても不可欠だと考えました。
単に写真を眺めて見ることと、整理しようとして見ることって、似ているようでちょっと違うんです。実は、整理をする目線で写真を見ることは、よりその写真を理解し、関わることになるんです。整理するということは、アルバムに入れるだけじゃなくて、ゴミ箱に移動するという操作もありますね。ということは、自分や家族にとって、今テレビ画面に写っている写真が、なんらかの意味を持つかどうかを考えて、要る/要らないを判断するということになるんです。
AIの技術によって、クラウドのフォトストレージサービスは、写真の被写体分類とかはすごく進化しましたけど、それぞれの写真が持つ「思い出力(おもいでりょく)」は、その写真に関わったひとでしか判断できないんじゃないかと考えています。
例えば、「社会人になって家をでる息子の後ろ姿を最後に撮影した写真」があったとして、AIが「これはあなたにとって大事な思い出の写真ですね」という風にはならない訳です。
”おもいでを楽しむ暮らし”を身近に
誰もがスマホを持ち、気軽に写真を撮ってスマホで見ることがごく当たり前になりました。クラウドの保存容量さえ確保すれば、スマホの写真を保存すること自体に困ることは無くなってきており、そのこと自体はとても素晴らしいことだと思います。でも、知らず知らずのうちに、そのスマホとクラウドの中に撮影した写真を閉じ込めてしまっていて、暮らしの中から写真に関する関わりやコミュニケーションが失われてきているのではないかと感じています。
写真をそれぞれが一人でスマホで楽しんでいるだけ、というのは、”おもいでを楽しむ暮らし”からはほど遠いのではないでしょうか。インタビューの最初にお話しした「おもいでを楽しむ暮らしが、実は身近でなくなってきている」という怖さを、なんとなく感じている方もきっと多いんじゃないかと。そんな課題を感じられた方には、ぜひ「おもいでばこ」をご利用いただきたいと考えています。
また、既におもいでばこをご利用のユーザー様には今回のアップデートをぜひご活用いただければと思います。今回のアップデートが行える「おもいでばこ」のシリーズは、PD-2000シリーズだけではなく、PD-1000SやPD-1000といった、2015年以降に発売したすべての「おもいでばこ」に対応しています。アップデートの前には、写真と動画のバックアップを必ず行っていただいた上※で、ぜひアップデートを行っていただき、今回搭載した、新しい機能を体験いただきたいと思います。
本体アップデートのご案内
PD-2000シリーズ 、PD-1000Sシリーズ、PD-1000シリーズのファームウェア アップデーターを公開いたしました。
(PD-2000シリーズは、Ver7.00、PD-1000SおよびPD-1000シリーズは、Ver5.50となります)
このアップデートで、今回根本にさんに語ってもらった「振り分けモード」「非表示アルバム」「アルバムグループ」に対応いたします。
アップデート方法等については下記よりご確認ください。
※不測の事態に備えて、本体ソフトウェアアップデート前には、写真や動画のバックアップを必ず行ってください。
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